本音で企画の背景を語る「舞台裏」。今回は「クリスタルボイスシステム」についてです。

ニーズとシーズがいっぺんにやってきたのが、クリスタルボイス。

歳をとると耳が遠くなる。それはわかっているつもりだったが、現実に親がそういう年齢になってくると、思いがけないことが起きた。別居していると、電話に苦労する。同居していると、テレビで苦労する。話が通じにくいし(中には聞こえないふりをして、言いたいことだけしゃべって切る人もいるようだが)、テレビも耳をふさぎたくなるような大音量だ。

MEMSマイクアレイで自然な音場再生

シーズは、音声処理技術である。MEMS(半導体)マイクをアレイ状にならべ、とある音声処理をほどこすと、とても自然な音場再生することができることがわかった。せっかく補聴器があっても、装着をいやがる人が多いのは、イヤホンを耳にいれると、外界と隔絶された感覚をもってしまうからだと考えるが、この新しい技術なら、まったく違和感なく使える。これは、とてもいい。

問題は、装置が大きくなることだ。補聴器をいろいろ調べてみたが、高級タイプは小さく、目立たないように設計されている。どうするか議論しているうちに、目に飛び込んできたのは、ソニーのこの製品だった。

ソニー・ワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセット(WI-1000MX2)

このデザインは秀逸だし、これなら、アレイマイクも音声処理回路もバッテリもネック部分に収納できる。そしてさらに調べると、似た発想で、BOSEがHearphonesという名前の製品を商品化していることもわかった。

Bluetoothでつなげば、いろいろ解決

そして気づいたのは、Bluetoothでヘッドセットをつないでしまえば、電話もスムーズではないかということ。そういえば、テレビもBluetoothでつなぐことができる(標準装備でなくても、Bluetoothスピーカーやヘッドホンをつなぐアダプタが市販されている)。

ほんとうに驚いたのは、「Bluetooth 補聴器」で検索して出てきた、スマートフォンにつながる補聴器の価格。自動車が買える価格のものがたくさん表示された。これはこれでニーズがあるのだろうけれど、ふつうには手を出しにくい。

基本的な技術開発は終わっています。一緒に、高齢化社会の必需品を製品化しませんか。